「好きなものを語る」
終電が過ぎると、街が停止したような雰囲気がある。
閉まっているのは駅側のはずなのに、
この街からはもう出られません
と言われている気持ちなる。
駅前にはズラリとタクシーが並ぶ。
昼間にも走っているはずなのに
なぜか夜の方が存在感が増している気がする。
四角く角張ったフォルムが
深夜に似つかわしくないフォーマルさを
醸し出していて、なぜかカッコよく見える。
擬人化したらシゴデキ人間みたいに描かれそう。
こう言ってはなんだけど、
別にタクシー自体は好きではない。
あんまり良い思い出もないし
積極的に乗りたくないし、終電には間に合いたい。
しかしどうしてか深夜に並んでいるのは
心を惹かれるものがある。
いつもはそんな顔しないくせにみたいなギャップが
タクシーにはある。ズルい。
乗る気はないのに少しだけ近くを歩いてしまう。
向こうからしてみたらただの冷やかしでしかないけど、
キリッとした顔つきを眺めておきたくなる。
閉じた街の中で世界は動いているよと教えてくれて
外にいる自分を許容してくれている存在な気がして
少し遠回りでも乗り場の横を通ってしまう。
包容力も感じさせやがって、やっぱりズルいな。
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