真夏の夜の忘れられないオモイデ(後編)

自分が今掴んだドアノブを見てみると


ドス黒い赤色に染まっていて


そして徐々に気づき始める


鉄のような匂いが部屋中に充満している事に


それは紛れもなく血だった


「……ぁぁぁああああぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」


喉が渇いていたことも忘れ僕は布団にくるまる


でもそこもだった


動く度に感じるヌルりとした感触


鉄の匂い、気づけばそこにあるドス黒い赤色


急いで布団から出ようとするが


足を「滑らせて」転倒してしまう


そして、そこで気づく


さっきからどこに行っても付きまとう血の痕跡


その正体は自分自身から


垂れ流しになっているものだという事に


「な、なんで……?!こんな怪我いつ……?」


寝る直前にはなかった


まるで山の狩猟で使う


トラバサミで挟まれたかのような傷跡


それが両足首、そして


両手首に深々と刻まれていた


声も出ないくらいの恐怖


僕は早く朝になってくれと願いながら


部屋の隅で震えていた


翌朝、怯えた僕を見つけた両親は


何事かと聞いてきたから


ありのままを伝えた


が、首を傾げられた


それもそのはず


僕の部屋のどこにも血の痕跡はなく


身体に傷跡も無かった


朝ごはんが冷めるから早く降りてきなさいと


両親に促され僕はリビングまで足を運んだ


僕が経験したあれは一体なんだったのか


血は幻覚か、怪我は気のせいだったのか


そもそも「その人」は誰だったのか


何も解決しないまま僕は日常に戻ることになった


あの日以降、「その人」には合わなくなった


ただ、肌感で感じる


「その人」はまだ近くにいる


僕は未だに怯えながら社会人になった今も


極々普通な日常を過ごしている

 

 


っていう物語を考えてみたんですが


いかがでしょうか?


やっぱ夏の夜といえば


怪談話ですよね


めっちゃ楽しい!!!!!