僕がまだ高校生の頃の話です
超がつくほどの真面目くんだった僕は
23時には就寝するのが習慣だったんですね
その日もいつものように寝ようとしたんです
いい感じに眠気も来て夢の中に落ちようとした
そんな時でした……
突如、僕の頭が覚醒したんです
寝れたはずなのに
目の前には見慣れた天井
視線を動かすと机やテレビ台
大好きなゲーム機たち
あぁ、寝れなかったんだ……
水でも飲んでこよう
そう思って起き上がろうとしたその時でした
……?
視線を動かす
…………?
視線は動く
???????????????????
が、身体が動かない
身体と意識が切り離された感覚
何が起きたか分からない僕は
とにかく視線を動かしてどうにかしようとしていた
けど、どうにもならない……
少しパニックになりつつも
現状の打開策を必死に考え
そこで思い浮かんだんです
そうだ、隣の部屋で寝てる弟に助けを求めよう
大声出せば気づいてくれるはず
(すぅ…………)
「ーーーーーーーーーーッ!!!!!」
……え?
……なんで?
……声も出ない?
真夜中、家の明かりは全然なく
僕の部屋に偶然入って来る人なんて居ない
……ヤバい
漠然とした不安
誰か助けて
そう思いながら
廊下に続くドアを見たその時でした
…………
…………
……誰か居るッ!
「ーーーッ!ーーーーーッ!」
僕は「その人」に必死に助けを求めました
動かせるのは視線だけ
凝視し、訴える
助けて欲しいと
それしか出来なかった
でも、僕にはわかったんです
さっき間違いなく、目が合った
僕で気づくんだから「その人」も気づいたはず
でも、「その人」は何をするでもなく
こちらをじっと見つめ、そして……
「…………(ニヤァァァ)」
まるで罠に掛かった獣を嘲笑うが如く
口角を上げ、その表情を笑顔に歪めたんです
不安と恐怖が入り交じり
動かない身体を、発することの出来ない声を
自分にある全てのエネルギーを
「その人」に威嚇をする事に集中させ
「ーーー!ーーー!ーーー!」
読んで字のごとく必死に訴え
そして……
「うあああぁぁぁぁぁ!!!!!!!」
僕はベッドの上で大声と共に飛び起きました
荒く上がった呼吸、全身に滴る汗
自身の異常に違和感を覚えつつも
周りを見渡せば、見慣れた光景
照明も机もテレビもゲーム機も
全て自分ので
そしてドアの方にも何一つ変化はなく
「その人」は居なくなっていた
「夢か……。水でも飲んで来よう」
そう言ってベットから降り
部屋を出ようとして
ドアノブに手をかけた時だった
ベチャり……
「……は?」
薄暗い部屋の中
自分が今掴んだドアノブを見てみると
…………