小学生の頃の僕は、とにかく体を動かすのが大好きな子どもだった。学校が終わるとランドセルを家に放り投げ、公園に走っていくのが毎日の習慣。ドッジボールにサッカー、野球、鬼ごっこ…とにかく走り回って、汗だくになりながら遊んでいた。クラスでは目立ちたがり屋で、休み時間になるとすぐに外に飛び出していく、そんな活発なタイプだった。
そんな僕に転機が訪れたのは、ある日仲の良い友達が1枚のカードを見せてくれたときだ。それが『遊☆戯☆王』というカードゲームとの出会いだった。いつもボールを追いかけていた僕が、紙のカードに夢中になるなんて自分でも想像していなかったけれど、その世界はとても魅力的だった。カッコいいドラゴン、強そうな魔法カード、バトルの戦略性…。気がつけば、僕も自分のデッキを組みたくなって、近所のカードショップに通うようになっていた。
そして、その中でひときわ僕の心を奪ったカードがあった。「ブラック・マジシャン・ガール」。最初に見たとき、思わず「えっ、誰この子…?」と声が出た。魔法使いのような帽子に、キラキラした瞳、くるんとした金髪、そして少し照れたような笑顔。男の子向けのカードゲームに、こんなにかわいいキャラクターがいるなんて、まったく予想していなかった。
それからというもの、僕の頭の中は彼女のことでいっぱいになった。カードショップで彼女のカードを探したり、友達が持っていれば「ちょっと見せて!」とお願いしたり。戦いの強さなんてどうでもいい、とにかく彼女を眺めていたい。
それがどんな気持ちなのか当時はよくわからなかったけれど、今思えば、あれが僕の“初恋”だったんだと思う。現実の人じゃなくても、心をときめかせたその気持ちは、、、本物だった。
遥翼