リリーのすべて

「リリーのすべて」という映画を観ました。

めちゃめちゃ泣けました。

世界で初めて性別適合手術を受けたとされる方のお話。

お互いが画家である夫婦のアイナーと妻のゲルダ。

主人公のアイナーが自分のもう一つの性「リリー」に気づき、本来の性に向かっていく。

 

 

主人公はアイナーだけれども、きっと性的マジョリティの方は妻のゲルダに感情移入して、主人公に感じると思う。

 

 

当事者のアイナーの苦悩ももちろんだが、一番苦しんだのは妻のゲルダだったと思う。

アイナーは、アイナーにとってなりたい自分に変化していくけども、ゲルダにとっては愛しているアイナーがリリーに変わっていってしまう。

それは、愛する人がいなくなってしまうということだ。

人が変化していくことは自分にはどうしようもできないことだし、アイナーがアイナーでいるということは愛する人が苦しむということである。

 

 

自分の好きな人や愛する人というのは、自分の一部になることだと思う。

その人の喜びは自分にとっての喜びにもなるし、苦しみは自分の苦しみにもなる。

受け入れるしかないとはわかっていても、愛する人がいなくなってしまうということは自分の大切な一部を捨てなくてはいけないということ。

 

 

リリーになっても優しい性格とかは変わらないのかもしれないけども、異性として愛していたアイナーを自分の中から捨てなくてはいけないのだ。

それがどれほど苦しいのか。

きっと捨てることはできるだろう。

でもきっとそれは自分が大切に育ててきた気持ちを捨てることだし、捨ててしまったら心にぽっかりと穴が空いてしまい、それがどれだけ寂しいことか。

 

 

性転換手術を受けるべくドレスデンに向かうアイナーの表情は希望に満ちていたが、見送るゲルダにとってはどれだけ悲しかったことか。

その対比が見ていて辛かった。

もちろんアイナーはずっと苦しんできたのだけれども、途中でエゴにも見えてしまった。

 

 

なりたい自分に変わるというのはとても素敵な事だと思うけど、大切にしてくれていた人を傷つけてしまうかもしれない。

でもそうしなかったら自分が一生苦しんでしまうのだろう。

 

 

今年一番考えさせられて、心にグッときた映画だった。

 

 

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