9/19六日目「剱岳登頂と生きてる実感」

剱岳後半戦。

剣山荘に1泊して、朝4時に起床。

前日20時半に寝ていたので、早朝でもすっきり目覚めることができました。

早寝最高!

登山は乱れ切った生活習慣もリセットしてくれます。

 

 

天気予報では曇りだったのですが、天気が変わって雨風が強い。

出発する頃には止んでほしいとずっと思っていましたが全く止む気配がなく、用意していただいたお弁当を食べつつ山荘に待機。

本当は朝5時に出発しようと思っていたのですが、雨も降ってるしあたりも暗いので、結局明るくなってきた6時頃に出発。

 

 

それでも雲や雨で景色が白んでいて自分の周りしか見えなかった。

雨が降ってる中、傘も刺さずに外に出ることがこんなに嫌なものだとは初めて知りました。

熱湯風呂に向かう出川さんの気持ちもこんな感じなのだろうか。

 

 

外はとにかく寒い。

体をあっためるためにあえて早めのペースで歩いた。

剱岳はひたすらガレキが多くて道もオープンなので、登山道を間違えないように注意深く登る必要がある。

 

 

山荘に宿泊していた方も天気が悪くて下山しており、登山者は誰もいなくてひたすら孤独な登山だった。

でも道中で見かけた雷鳥が心を癒してくれた🦃

こんな悪天候でしかも高いところなのに飛んでくることに感動した。

何気なく食べていた「雷鳥の里」も、今の自分にとっては特別な存在。

雷鳥が好きになったよ。

 

 

とにかく剱岳は険しい。

一般登山できる日本の山で一番厳しいんだとか。

この日は雨も降っていたので特に厳しかった。

鎖場という鎖を使って登る場所なんかは、手が滑る。

100円の滑り止め付き手袋を用意して準備万端だと思っていた自分をどつきたくなった。

 

 

普通の山と違って、剱岳は足を踏み外したりしたらただでは済まないような場所がたくさんある。

この橋なんかもそう。

ブレイブメンロードかよ。

山間は横っ風が強いので渡るのがかなり怖かった。

 

 

そして有名な難所「かにのたてばい」

鎖を渡ってのぼる様がカニの歩く様に似てるのだろう。

手が滑って落ちたら、どこまで落ちていくのだろうか・・・

100円の手袋が全ての頼りで、命をかけるにはずいぶんと安い手袋を買ってしまったもんだ。

ずぶ濡れな体に吹き付けてくる風がとても冷たく、ガクガクに体も震えた。

 

 

それでもなんとか登りきり、ようやく頂上へ。

とにかく叫んだ。SASUKEのFIRST STAGEの「そりたつ壁」を登り切ったら、僕はきっと叫ぶタイプなんだろう。

あたりは真っ白で頂上の景色は何も見えない。

でもやりきったぞという達成感だけは心に深く刻まれた。

 

 

荷物を軽くするためにカップヌードルは持って来れずだったので、代わりにジャイアントカプリコを食べておきました。

 

でも登山って頂上を登りきって終わりじゃないんですよね。

RPGみたいに登りきったらワープできる場所でもありゃいいんですが、21世紀にはまだそんなもんはない。

 

 

ここからの下山も大変な道のりだった。

行きに「かにたてばい」、帰りに「かにのよこばい」

ここも滑って落ちたらワンチャン死ぬやつ。

俺は「ひつじのぼくじょうあるき」ぐらいが好きなのに。

 

 

ゆっくり景色を見てられればいいけど、帰りのバスの時間もあるのでひたすら山を下りていく。

下りていくと、なんと登山者の姿が!

昨日、山荘で少しお話した方だった。

この時、なんだかとても嬉しかった。

1人暮らしだし1人の時間も好きなんだけど、登山の悪状況が寂しさを加速させたのだろうか。

お互いすごく寒いはずなのに、立ち止まってたくさん会話をした。

かにのたてばいで死ぬかと思ったとか、風も雨も強くて辛かったのだとか。

とにかくこの状況を共有できる人と出会えたことが嬉しかったのだ。

 

 

防水のマウンテンパーカーも靴もびっちょびちょになっていて死ぬほど気持ち悪くなりながら、なんとか下山をすることができた。

 

 

山では出会った人に「こんにちは」と挨拶をする習慣がある。

登山者がたくさんいる山ではありがたみが薄いけど、こんにちはって言えることがこんなに嬉しいことなんだな。

 

 

あと過酷な状況っていうのは孤独さを加速させる。

都会にいると人もたくさんいるし薄れてしまうけど、やっぱり心では人を求めてるもんだな。

 

 

駅に戻って車で着替えた。。

全身がびちょびちょでめちゃめちゃ気持ち悪かったので爽快感がものすごい。

そしてその日に泊まるホテルを予約して、高速道路に乗って向かった。

鎖を握る手が滑ったら死ぬというあの感覚がまだ残っており、ハンドルを握っている手から力が抜けていくような感じだった。

状況は違えど、今ここで手を離したら死ぬんだな。

 

 

でも生きてるだけでありがたい、とは思えなかった。

もちろん人間生きて死ぬだけで立派だとは思うけども、ただ生きてるだけじゃ人生には満足できないんだな。

恋にせよ芸術にせよ仕事にせよ何にせよ、なんだか生きてる楽しさっていう実感もほしいんだから、人間ってのはつくづく欲深い生き物だ。

 

 

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