おじいちゃんと生ウニ

僕はお刺身が好きだ。

おじいちゃんとおばあちゃんが宮城出身で新鮮な魚介が故郷から送られて来るので、おばあちゃんちに遊びに行った時によく食べさせてもらった。

新鮮なホタテの刺身はもちろん、イカの刺身も甘くて、とんでもなくおいしい。

 

 

兄は刺身が苦手だったので、それを尻目に姉と一緒に食べまくっていた。

遠慮なんて一切ない。だって子供だもの。

 

 

時が経ち、姉はたくさんの子宝に恵まれた。

おばあちゃんちに行った時に甥っ子たちとお寿司を食べた。

甥っ子たちはエビやサーモン、マグロが好きなようで、ウニとかは全然食べない。

 

 

はいはい、君らが食べられない余ったものだけ食べますよ、と大人な顔をしながらいいもんを食ってる。

大人になった時にずるいおじさんだったなと思われるかもしれない。

それでもいい。人間の汚さを少しずつ知って大人になっていくといい。

君らが大人の階段を上るために、おじさんは踏み台になるよ。

 

 

自分が子供だった頃を思い浮かべると、ウニもトロもなんでも好きだった。

逆に赤身のマグロがあまり好きではなかった。

かわいくない子供さ。

いや、でもネギトロは大好きだった。

今でも好き。

かわいい大人さ。

 

 

ウニが好きになったきっかけがある。

それは、今は亡きおじいちゃんの故郷に行った時の話だ。

 

 

5歳ぐらいの頃だろうか。

おじいちゃんの故郷の宮城に家族で向かった。

おじいちゃんちがお母さんの故郷なわけだから、そのまた故郷に行くのってなんだか不思議な感じがする。

 

 

初めて行った宮城の、宮城らしい記憶は1ミリも覚えていない。

2つ覚えていることのうちの1つは、おやつに落雁が出てきたこと。

初めて見るお菓子をぱくりと口に放り込んでみた。

粉っぽくてまずい!!

 

 

おばあちゃんの家に行くと、ブルボンの「エリーゼ」や「ルマンド」が出てくるのって本当にありがたいことだと感じた。

ブルボン創業者も「二度と子供が落雁をおやつに食べなくてもいい世の中にする」

そんなメッセージを込めてるんじゃないかと錯覚するほどにまずくて衝撃だった。

 

 

いや、きっとおいしい落雁もたくさんあるだろう。

でも初めて食べた落雁がおいしくなさすぎて、今でも苦手意識が残っている。

 

 

もう一つの記憶は、おじいちゃんとお姉ちゃんと漁港に行った時の話だ。

 

 

初夏だっただろうか。

気持ちよく晴れた日だった記憶がある。

おじいちゃんとお姉ちゃんと堤防に座った。

その近くにはたくさんのウニが水揚げされていた。

おじいちゃんは手慣れた手つきでひょいとウニを2つ取ってパカっと開けて「食べてみろ」と僕らに言った。

振り返れば確実にアウトな行為だと思う。

さすが戦前生まれはひと味違う。

 

 

5歳の僕に善悪の区別がつくはずなく、言われるがままに生のウニを食べてみた。

う、うめえ!

濃厚な味わいで海水のしょっぱさもあるから何もつけなくてもおいしい。

 

「どうだ、うまいだろ?」

おじいちゃんは嬉しそうに笑った。

きっと故郷の味を孫にも知ってもらえたのが嬉しかったに違いない。

 

わかるよ、おじいちゃん。

自分の好きなものとかを人にもわかってもらえるのって本当に嬉しいよね。

それが孫だなんてことさら最高じゃあないか。

 

 

もともとはウニはそんなに好きではなかったけども、それからはウニが好きになった。

ウニを率先して食べるようになった子供に、親は頭を抱えていただろう。

おじいちゃん、いろいろな意味で罪な男だぜ。

 

 

先日、宮城に行った時に朝市なるもので生のウニを頂いた。

やっぱりとれたてのウニはおいしいなあ、と思い、亡くなったおじいちゃんとのウニを思い出した。

 

おいしい。けど物足りない。

これから先も、あの時のウニを超えることはないだろう。

僕もいつか孫ができた時に食わしてやりたいね。

その辺に水揚げされてるウニじゃなくて、ちゃんと買ったやつをね。

 

 

 

 

 

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