アルベール・カミュ『異邦人』の主人公・ムルソーは、
恋人のマリーから「わたしを愛しているか」と尋ねられ、
「愛していないと思う」と答えます。
これについて、詳しくは巻末の解説を引用します。
人は、つねに相手のことを考えている訳ではなくとも、きれぎれの感情に抽象的統一を与えて、それを「愛」と呼ぶ。ムルソーは、このような意味づけをいっさい認めない。彼にとって重要なのは、現在であり、具体的なものだけだ。現在の欲望だけが彼をゆり動かす。そういう欲求が起きれば、動いているトラックに飛び乗るほどの力をふるう。
『異邦人/カミュ』
人間は常に恋人の存在を想っている訳ではなくて、想う瞬間もあれば、意識に存在しない瞬間もあります。
そういった細切れの感情に、僕たちは勝手に連続性を与えて便宜上、「愛」と呼んでいます。
小説の主人公であるムルソーは徹底的な正直者で、刹那刹那の感情に嘘をつきません。
だからこそマリーに「愛していないと思う」と伝えています。
人間の心はそんなに単純じゃない。
イエスでもノーでもない、微妙なゆらぎを「太陽のせい」と抽象的な動機を主張したのだと思います。
女風を利用するに至った動悸や理由も、シンプルに伝えられるほど明白でないかもしれない。
もしかしたら太陽のせいで利用を決めた人も居るかもしれない。
曖昧なものを曖昧なまま、丁寧に聞き入れて受け止められる、そんなセラピストさんになれたらなと思います🙇♂️