【視線】

 


 

 

公園で筋トレをしてると

 

使いたい器具、もとい遊具がほかの方と

被ることがある

 

 

ガッツリ筋トレしたい人

ランニングの間に無酸素を入れ込みたい人

気まぐれに懸垂器を見つけたからぶら下がりたい人

 

 

その日はとくに

懸垂機の需要が集中していました

 

 

僕が公園に到着した頃には

すでに野太い唸り声と共に巨体を

豪快に持ち上げる男性が

 

 

 

玄人だ

 

 

 

フォームと服の上からでもわかる

広々とした広背筋が僕に緊張感をはしらせた

 

 

 

 

その巨体を横目にみながら

おそらく奥さんと電話をしている

会社帰りらしきサラリーマンの手にはすでに

トレーニング用のグローブがはめられていた

 

この人も懸垂器をねらっている

 

 

 

僕も徐に腕立てから始めて

視線をチラチラと懸垂器へむけ

牽制をする

 

使いたい意思は伝えたい。

でも取り合いになって揉めたくもない。

 

大人、な対応が求められる場面だ

 

 

 

幸い3人ともお互いの存在を感知してからは

視線と会釈、察しで

なんとなくのローテーションが出来上がっていた

 

 

 

話のわかる方々でよかった…

 

 

 

と安堵したのも束の間

話の通じない輩が乱入し

そのローテーションを崩しにきたのだ

 

 

 

そう子供である

それも3歳児くらい

 

親の手を引き

曇りなきまなこを潤ませて

こちらを見つめてくる

 

 

大人たちが取り合うように使ってる遊具だ

気になってしかたないのだろう

 

 

 

視線が眩しい

 

 

 

日々の鍛錬も、体型維持という崇高な理由も

子供の純粋な好奇心の前では無力だった。

 

 

あっけなく、

ローテーションは崩された。

 

 

大人たちは軽く会釈し皆無言で別々の遊具へと散っていった

 

 

父親が肩車をし

子供が小さな手をブンブン振り回して

一生懸命に懸垂機の持ち手を掴もうとしている

 

 

なんとは微笑ましい

思わず頬が緩む

 

 

 

どうやら

 

 

筋繊維は痛めつけたが

子供の笑顔は守れたようだ

 

 

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